食品のあく抜きや膨らし粉としても知られている重曹。お掃除に使ったことはありますか?
汎用性が高く安価で、しかも天然成分のため環境にも人にも優しい。
ナチュラルクリーニングの万能選手のようなイメージですよね。
でも実は、重曹は決して万能なわけではありません。
重曹で汚れを落とせると期待していたのに、思ったほどの効果が得られずにがっかりした、なんて経験がある方もいらっしゃるかもしれません。
油汚れに強いと言っても、蓄積した頑固な汚れをきれいさっぱり落とすような作用があるわけではないのです。
どちらかと言うと、重曹は日常のお手入れや軽い汚れ向き。正しく効果的な使い方のコツを知れば、家中のお掃除に便利に使うことができますよ。
重曹とは
重曹の正式な名称は「炭酸水素ナトリウム」
ベーキングソーダ、重炭酸と表記されることもあります。
重曹は温泉の天然成分として知られ、昔から重宝されてきました。
大量に摂取することがなければ人体に害を及ぼすことはないため、食用、医療用、農業用など、幅広い分野で利用されています。
汚れは種類によって、酸性のもの、アルカリ性のものがあります。
中和反応を用いて汚れを除去するためには、酸性の汚れにはアルカリ性の洗剤、アルカリ性の汚れには酸性の洗剤が有効となるわけです
重曹が得意とする汚れとは
重曹の水溶液は「弱アルカリ性」の物質。
水素イオン濃度指数(pH)は8~9と、ごく弱いアルカリ性です。
重曹水で落とせる主な酸性汚れは、以下のようなものです。
・油汚れ ・手垢 ・湯垢(皮脂や石鹸カスが混じった浴室特有の汚れ) ・皮脂汚れ ・血液(タンパク質) など
しかし、重曹水の中和反応による洗浄力は比較的マイルド。
頑固な油汚れを引きはがす力は決して強力ではありません。そのため、軽い汚れや日常のお掃除に向いているというわけです。
重曹には脱臭効果も期待できます。
特に酸性の臭い成分に効果的。
・生ごみ臭 ・汗の臭い ・靴、玄関の臭い など
酸性の臭い成分を中和する作用が働くと同時に、重曹の静菌作用が働きます。
静菌作用とは、細菌の増殖を抑える力のこと。
殺菌するほどの強い力ではないものの、臭いの元となっている細菌の増殖を抑える作用が働き、臭いを抑える効果があります。
重曹の使い方のコツ
決して洗浄力が強いとは言えない重曹ですが、洗浄効果を上げるコツがあります。
①研磨剤として使う
重曹は比較的水に溶けにくく、研磨剤としてクレンザーのように使うことができます。
一般的なクレンザーよりも硬度が低く適度な柔らかさがあるため、素材を傷つけにくいのが特徴。
中和反応に加え、物理的に汚れをこそぎ落とすことで洗浄力がアップします。
②加熱して使う
重曹水は加熱すると、炭酸ナトリウム、二酸化炭素、水に分解されます。これにより生成する炭酸ナトリウムは、pH11程度のアルカリ性物質。
重曹水に比べ、強力な中和作用を持っています。
冷却しても重曹に戻ることはないため、より強い酸性汚れにも効果を発揮しやすくなります。
【水またはお湯に溶かしてから加熱する】
重曹を水に溶かし加熱することで、アルカリ性の力がアップします。
ただし、熱湯に重曹を投入するのは大変危険。
一気に発泡、噴出する恐れがあるため、必ず水、又は40℃程度のお湯に溶かしてから加熱しましょう。
沸騰すると大量に発泡するので、水の入れすぎにも注意が必要です。
☆素手での取り扱いには注意!
重曹は刺激の少ない物質ですが、使用時にはゴム手袋またはビニール手袋を着用しましょう。
長時間素手で作業していると、手荒れの原因になりかねません。
肌がデリケートな方は特に注意が必要です。
重曹がNGな素材
アルミ製品(お鍋やフライパンなど)に重曹を使うと黒ずみの原因になります。
アルミに重曹はNG! と覚えておきましょう。
同様に、銅や真鍮も重曹とは相性が良くありません。
柔らかい素材、傷つきやすい素材には不向きです。
重曹の研磨作用によって、表面が傷ついてしまいます。
木製品や大理石、表面にデリケートな塗装を施したものには使用を控えましょう。
また、PCやテレビなどの電気製品にも使わない方が良いでしょう。
☆保管は湿気を避ける
重曹は常温では安定した物質で長期保存が可能ですが、湿気により固まってしまうことがあります。
密閉容器に入れ、高温多湿を避けて保管するのがおすすめです。
重曹の主な使い方best3
①クレンザーとして使う
強力な中和作用があるとは言えない重曹ですが、研磨作用を活かしてクレンザーとして使うことができます。
重曹は粒子が細かく、ブラシやスポンジで擦ると肝心の粒子がスポンジの中に入り込んでしまいます。
丸めたラップや、マイクロファイバークロスなどを使って、しっかりと粒子を押さえ込んで汚れを掻き落としましょう。
②重曹水 スプレーで使う
重曹を水に溶かしてスプレーして使うのは、基本的な使い方のひとつです。
既に水に溶かした状態の重曹スプレーも市販されています。
重曹は冷たい水には溶けにくいため、40~45℃のぬるま湯に溶かすのがおすすめ。
洗浄効果を高めようと重曹の量を増やしても、ほとんど効果は上がりません。
溶けきれなかった粉によって、スプレーが詰まりやすくなってしまいます。
乾いた後に白い粉が残る原因にもなるため、重曹水の濃度を上げるのはおすすめしません。
洗浄効果を高めたい場合は、重曹水を一度加熱してから使うことでアルカリの中和作用がパワーアップします。
ただし、熱湯に重曹を投入すると一気に発泡して危険なため、必ず水(またはぬるま湯)に溶かしてから加熱しましょう。
③脱臭剤として使う
重曹の脱臭効果が得られるのは、酸性の臭いが存在する場所。
生ごみや汗の臭いに対して中和作用を発揮します。
重曹は汎用性が高く、様々な場面で便利に使うことができます。
使いこなすコツは、重曹の性質と正しい使い方を知ることです。
もともと強力な洗浄力があるわけではない重曹は、あくまでも軽い汚れや日常のお掃除にピッタリ。
重曹では落とせないほどの頑固な汚れを溜め込まないために、日々のお手入れに役立てるのが賢い使い方ではないでしょうか。